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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)1255号 判決 1950年12月08日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人遠山丙市同矢吹忠三の上告趣意第一点について。

罰金刑の言渡を受けた者が罰金を完納することができない場合の労役場における留置は刑の執行に準ずべきものであるから、留置一日に相応する金銭的換算率は必ずしも自由な社会における勤労の報酬額と同率又は貨幣価値の変動と比例して決定されるべきものではない。そうして刑法一八条は罰金不完納の場合の労役場留置期間の割合を所定の範囲内において裁判官の裁量に委ねているのである。従って本件において原判決が同条所定の範囲内で被告人に対し金千円の罰金不完納の場合の労役場留置期間の割合を一日金五〇円と定めたことが憲法三六条その他国民の基本的人権を保障した憲法の条規に違反しないこと当裁判所大法廷判例の趣旨に徴し明らかである。(昭和二三年(れ)二八一号同二五年二月一日同二三年(れ)一四二六号同二四年一〇月五日各大法廷判決参照)次に、同一八条違反の論旨は右労役場留置の金銭的換算率が貨幣価値の変動に比例して決定されるべきことを前提とするものであるがその前提の採用し難いこと前述のとおりであるから論旨はすべて理由がない。

同第二点について。

論旨は結局被告人の不利益な主張に帰し適法な上告理由とならない。

よって刑訴施行法二条旧刑訴法四四六条に従い裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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